【読書ノート】『ステータスゲームの心理学』

読書ノートをしばらく更新していませんでしたが、読書は好きなので月に3~5冊は読んでいました。

読んでばかりだと頭の中が、ゴチャついてしまうので、久しぶりに頭の整理がてら更新したいと思いPCに向かっています。

ということで、読んで面白かった本を個人的に記録しておきます。

田舎に住む27歳男性の最近のお悩み。

私は今、会社員として毎月固定給を頂いており、田舎は物価も安いし特に遊ぶところも少ないのでお金を使うことが少なく、経済的に一人で暮らす分には困っておりませんが、早く結婚した方が良いと人から言われたり、業務上で無駄なことをしたり(例えば未だに書類に判子を押したり)、仕事で時間が拘束されていたり、苦手な人の顔色を窺わなければいけなかったり、昔ながらの価値観を大人から押し付けられたりと、心のどこかで不自由さを感じていて、ふとした時に「自由」を求めています

「自由」といえば、敬愛する森博嗣先生(工学博士でミステリー作家、代表作『すべてがFになる』)が人生の目的を「自由の獲得」とされていました。

私も同感で、森博嗣先生の著書『自由に生きる自在に生きる』を読み、何にもこだわらないで自由に生きようと決意したのがここ近年の話。

しかし実際は、「自由」が欲しいと考える一方で雲を掴むような感覚が常にあります。

求めつつも、そもそも「自由」とは何なのでしょうか。漠然としたものは手に入りません。

「信じるところに現実はあるのであって、現実は人を信じさせる事が出来ない」太宰治『津軽』より

人が現実を見るときには外を見ているようで実は内を見ているもので、この意識という幻想の奥底に人生の隠された構造があると『ステータス・ゲームの心理学』の著者ウィル・ストーはいいます。

まず、本書によると人間の潜在意識にはステータスを認識する「ステータス検知システム」があり、それは相対的に動作し、「ステータスシンボル」を敏感に読み取ります。「ステータスシンボル」とはあらゆるものがそれになり得ます。ブランドのロゴから人の体形や佇まいなどあらゆるものが想像力豊かな頭の中で意味をもちステータスを示すシンボルになるのです。

私が中学生の時に、イケてる男子は通学時に使用するママチャリのハンドルを上向きにして通学するという風習がありました。そしてそんなママチャリに乗っている男子が女子から人気が高い傾向がありました。今思うとママチャリのハンドルになんの意味があるのだと思いますが、そのようなステータスシンボルが私自身、生きていく中であったことを自覚しています。

そして、人はそのシンボルを他人と共有し用いながらステータスを巡るゲームをプレーしていると著者はいいます。

読んでみて何個か気づきがあった部分を紹介します。

なぜ人はルールを守るのか

狩猟採集の時代が長かった人類には集団をうまく回すためのルールが刻み込まれています。(年長者を敬うなど)そのルールを従順に守る人こそステータスが上がりその集団でトップに上がっていく人です。そのようなルールが国、会社、学校などでの色々なゲームで存在しています。

仮にゲームが違えばルールも違いそこにカルチャーショックやジェンダーギャップがでてきます。

ステータスを巡るゲーム内でルールを守ることでステータスをあげていると考えるとたしかに従順な人ほど評価され出世していくような流れはあります。

このルールは誰が管理しているのか。

人間は有事に集団で迅速に協調するために神経活動の同期性があることが確認されており、ルールを守らない者に対して集団の合意のもとに処刑や社会的疎外が行われてきました。これはある意味公平で一人の専制者が長く続くかないことにもつながる反面、「いとこたちの専制」という集団的合意による専制となります。これが未だに個人を怯えさせ檻に閉じ込めています。現代社会では炎上というものでしょうか。

なぜ人は他者の目を気にするのか

集団にとって有益さを示すために結果を出して何かの分野で成功を収めたり、集団の利益になるような行動を行うということが求められ、これに合わせて脳が発達し頭の中の他者の幻覚ともいえる評判を気にしたり、言語を操ったりといった能力を発達させていきました。このことが人間の複雑な社会を発展させることにつながったとされますが、一方で評判の喪失を極端に恐れる生き物へと変えたといいます。しかし、評価とは自分がどう思われているのかという頭の中での幻想です。喪失したと感じた時に元々ないものだと思えるかどうかが大切です。

なぜ人は有名人の真似をするのか

人間はいくつかの合図をさがすようにできており、その合図を見つけると無意識に模倣、追従、同化という一連の行動を引き起こすようです。

まずはその合図とは、

①自己類似性の合図

年齢、人種、ジェンダーなど自分に似た人を探している。

②スキルの合図

そのゲーム内での有能な人を探している。

③成功の合図

いい車、大きな家、ブランド品などが成功の合図を探している。

④名声の合図

会話内での声質や身振り手振りから誰が誰を尊重しているのか合図を探し尊敬を集めている人を探している。

これらの合図を見つけると模倣、追従、同化のプログラムが無意識化で発動すると著者はいいます。

このような特徴が人間にはあり、有名人と同じ格好を真似たりルーティンを真似たりするようです。逆にこのことをより理解し、これらの合図を使いこなすことができれば、狙ってインフルエンサーになることができるかもしれません。

なぜ人へ怒りがわくのか

人間には、人類以前の支配の時代の野獣の一面が未だに残っており、時折支配モードが発動するといいます。

自らのステータスが陥れられたと感じるときにそのモードが発動し相手を支配したいという気持ちが高まるようです。

殺人などの主な原因も多くはこのステータスによるものが多いそうです。強盗や暴力など一見目的が物欲や必要に駆られての行動に見られがちな犯罪でも解き明かすと根本には人からの注目を浴びたかったなどステータスの面が原因になっていることが多いようです。

人から馬鹿にされた時、誰からも注目されなかったとき自分のステータスが脅かされ相手や他者に対して、ぎゃふんといわせてやりたい時が誰しもあると思います。これは人類が知的な名声ゲームへと進化していく過程で上書きされなかった名残でもあります。

もちろん、有事の際のリーダーは輪を尊ぶ人よりも支配性が強い人が選ばれる側面もあり人類にとって必要な面でもありそうですが、人から馬鹿にされた時にこのことを思い出すと少し冷静になれるかもしれません。

自分自身が存在するこのステータスを巡るゲームの構造を理解するだけで、周りに流されずに、あるいは流されても客観的な現実まで戻り自由に生きていくことができるかもしれません。

そのことを今後も忘れずに頭に入れておきたいと思います。

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