【観光×創作】国史三戸城跡城山公園を歩く1ぴきのねこ

僕はある日家を出た。

家を出ること自体は、もちろん今回が初めてではない。

今までは、家を出ること自体に大それた理由はなかったし、確かな理由なんていらなかった。

ポカポカした陽気の下で外を散歩したいと思えば迷わずに家を出たし、外で友達がワイワイ遊んでいて混ぜてもらいたければすぐに外に出た。

外に出ること自体に意味はなかった。家に帰ることが自分にとって常に前提にあったからだ。

だけど、初めて僕は今回家を出て二度と戻らないことを決意をした。

そこに、明確な目的を持って外に出たいだとか何かをしたいという動機はなかったのだが、ただ家を出なければならないと思ったのだ。

家を出てとにかく歩いた。目的もなく当てもなく歩いては休んだりまた歩いたりを繰り返した。

ここしばらく、これほど動くことがなかっただけに身体の疲労が抜けない。

季節は秋だ。夏は終わったもののまだ日向は暖かく、日陰は少しひんやりとした空気をまとう。

紅葉が綺麗だと近くを歩いているひとが言っているが、僕にはよく分からない。わからないけど、それを見て人が嬉しそうなのは何となく分かる。

やがて辿り着いたところで腰を下ろして景色を眺めた。

景色を眺めると色んなものがあって面白い。

特にここは初めて来たと思うが何か懐かしいようなそんな雰囲気もある。

僕はどうして家を出たんだっけ。っと考えて少しして思い出した。そうだ友達と喧嘩したのだ。

僕らはいつものようにじゃれあっていただけだったが、僕の何かがそのように仕向けたのだ。

それは僕自身にすら分からないものだったが、僕はその友達のことが今も嫌いではなかった。

僕らはその日ぎこちなく顔を合わせた後、いつものように朝ご飯を食べ、その後僕は強い決意のもと家を出た。

そして、今ここにいるのだ。

ひゅうと風が吹き、落ち葉が僕に舞い落ちる。

近くでカラスが鳴いている。

カーカーカーカー

落ち葉の中で何かを思い出した。思い出したと言ってもこれは記憶なのか確信は持てない。

場面が頭の中で浮かんでは煙のようにぼわんと漂い気がつくと消えた。

その時の出来事、気持ち、様々なものに触れようとすると何も残らなかった。

でも、残り香のようなものが鼻について回った。

僕はどうしてここにいるのだろう。

そもそも何をしていたんだっけ。

どうしてここに来たんだっけ。

僕はあの日痛みを感じていた。

血の匂いが混ざったような冷たい雪を覚えている。

僕は大好きだった母親や兄弟たちと引き裂かれたのだ。

記憶の煙がたちこめる。

今と過去、自身の時間のズレを自覚するが焦点が定まらない。

僕はあの日差し伸べられた小さな手を覚えている。

寒さでかじかんだ赤くて小さな手。

あの日、僕たちは出会って友達になったのだ。

あれからどのくらい時間が経ったのか今はもう分からない。

もう後戻りはできないけれど、もしまた出会うことができたらその時、僕はまた君と友達でいたいと思っている。

それまで僕は長い長い旅に出かけるつもりなのだ。


国史三戸城跡城山公園について

舞台は青森県三戸町にある三戸城跡城山公園です。

2022年3月15日に国の史跡に指定されたばかりです。

かつてこの辺りを治めていた南部氏が居城していた聖寿寺館が焼失したことからこの三戸城へ移城となりました。

三戸町立歴史民俗資料館・三戸城温故館があり、この辺りの歴史について知ることもできますし、お花見から紅葉まで季節ごとに綺麗な景色を鑑賞することもできます。

また、三戸町は漫画家の馬場のぼるの故郷で町中に絵本「11ぴきのねこ」の石像がたっています。

全部で11ぴき分の石像がたっていますので、探してみると面白いと思います。

三戸城跡城山公園のアクセス

青森県外からの場合

新幹線「八戸駅」より青い森鉄道盛岡・三戸方面へ「三戸駅」降車(運賃580円)

「三戸駅」から南部バス三戸・田子方面行「三戸町役場」で降車(運賃100円)

「三戸町役場」から徒歩10~15分ほど

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